はじめに
豊胸術は、女性のバストラインを整え、理想のスタイルを実現するために行われる美容外科手術です。この手術は長い歴史があり、現在ではシリコンインプラントや脂肪注入など、さまざまな手法が選択されています。
しかし、手術の際に行われる切開部分が術後の傷跡として残ることがあり、そのケアが重要になります。特に、腋の下や乳房の下から行われる切開では、肥厚性瘢痕になりやすいという特徴があります。これらの傷跡を最小限に抑えるためには、適切な術後ケアと治療が必要です。
豊胸術についての一般的な知識
豊胸術には、主に以下のような方法があります。
- シリコンインプラント法:
- シリコン製のバッグを挿入することでバストのボリュームを増加させます。
- 切開場所は腋の下、乳房の下、または乳輪周囲が一般的です。
- 脂肪注入法:
- 自身の脂肪を吸引して胸に注入します。
- 大きな切開は必要ありませんが、注入後の吸収率には個人差があります。
- ハイブリッド法:
- インプラントと脂肪注入を組み合わせた方法で、より自然な仕上がりを目指します。
傷跡が問題になる理由
- 切開部位ごとの特徴:
- 腋の下からの切開:
- 腕の動きによって緊張がかかりやすく、肥厚性瘢痕になりやすい部分です。
- 乳房の下からの切開:
- バストの重みがかかり、赤みや盛り上がりが長期間残ることがあります。
- 個人の体質:
- ケロイド体質の方や傷の治癒が遅い方は、特に注意が必要です。
- 術後ケアの重要性:
- 適切なケアを怠ると、傷跡が目立ちやすくなる可能性があります。
傷跡の種類
豊胸術後に見られる主な傷跡のパターン
- 赤みが残る場合
- 色素沈着
- 盛り上がった傷跡(肥厚性瘢痕)
- 白く目立つ傷跡
当院での治療法
- 内服治療:リザベンや抗炎症薬を使用し、瘢痕の形成を抑制します。
- 外用薬:ステロイド軟膏やビタミンA、美白成分を含むクリーム、シリコンジェルシートを処方します。
- レーザー治療:フラクショナルレーザー、ロングパルスNd:YAGレーザー、Qスイッチレーザー、IPL、POTENZAを使用します。
- 注入治療:ケナコルト注射、ボトックス注射、ヒアルロン酸、PN、PDRNを使用し、瘢痕の改善を促します。
症例の提示
症例1:37歳女性 乳房インプラント術後1年の肥厚性瘢痕
- 病名:色素異常、陥没を伴う瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド
- 治療内容:瘢痕(範囲:線状瘢痕 ~50㎠以下)に対してPOTENZAを用いての治療
- 治療期間・回数:2ヶ月に1回、その後定期的な通院を経て1年から2年
- 費用(自由診療):総額60,000円~150,000円(レーザー代、自宅でのスキンケア費用等を含む)
- リスク・副作用:みずぶくれ、かさぶた形成、痛みによる不快感、術後の赤み、腫れ、あざ、出血、熱傷、発疹、瘢痕、軽い出血、色素脱失、色素沈着など。またごく稀に治療箇所の色が周囲の色に比べて一過性に明るくなる、又は暗くなる可能性があります
症例2:33歳女性 乳房インプラント術後3年の赤みの残った脇の瘢痕
- 病名:色素異常を伴う瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド
- 治療内容:瘢痕(範囲:線状瘢痕 ~50㎠以下)に対してロングパルスNd:YAGレーザーを用いての治療
- 治療期間・回数:1ヶ月に1回、その後定期的な通院を経て1年から2年
- 費用(自由診療):総額20,000円~80,000円(レーザー代、自宅でのスキンケア費用等を含む)
- リスク・副作用:みずぶくれ、かさぶた形成、痛みによる不快感、術後の赤み、腫れ、あざ、出血、熱傷、発疹、瘢痕、軽い出血、色素脱失、色素沈着など。またごく稀に治療箇所の色が周囲の色に比べて一過性に明るくなる、又は暗くなる可能性があります
院長より
豊胸術後の傷跡でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。予防的な治療も可能ですので、手術を予定されている方も早めにご連絡いただければ幸いです。専門的な治療とケアで、美しい仕上がりをサポートします。
記事執筆者
きずときずあとのクリニック銀座院院長 野村 美佐子