「ほくろ」は医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれます。母斑とは「アザ」のことで、ほくろは比較的小さな黒~茶色のできものです。ほくろは皮膚内でメラニン(色素)を作る細胞の母斑細胞が増えることによって発生します。
子どもの頃は平らなほくろでも、大人になって母斑細胞が皮膚の深いところで増えるとイボのように盛り上がってくるなど、形状は様々です。
ほとんどのほくろは良性ですが、巨大なほくろなどは悪性化する可能性もあります。
また、ほくろの悪性化初期段階は、一見して良性のほくろとは見分けがつかないことも多いです。少しでも違和感のあるほくろがある場合には自己判断せずに、早めにご受診されることをおすすめします。
医学名:黒子(こくし)、色素性母斑、色素細胞母斑(しきそさいぼうぼはん)、母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)
形状:平らなもの~盛り上がったもの、サイズは小さい~大きいもの(5mm~1cm程度)、色は黒~茶~青みを帯びるなど様々
できやすい場所:からだ中どこでも(特に顔・手のひら・腕・足・首など紫外線が当たりやすいところ)
ほくろと言っても、どれも同じではありません。実はよく観察すると、いくつかの種類に分かれます。
上記のような特徴がみられる場合には、速やかにご受診ください。
ほくろが発生する原因は、メラニン色素を作る色素細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞の増殖です。母斑細胞が表皮~真皮で増えることによって、ほくろとなります。
また、「母斑細胞」は皮膚の浅いところ(表皮)にあると平らですが、皮膚の深いところ(真皮)で増えるにつれて盛り上がったほくろになります。
ほくろの多くは後天性であり、以下のような要因によって、ほくろができやすくなります。
痛みの有無、ほくろができた時期・経過など、詳しくお伺いさせていただきます。
また、ダーモスコープ(拡大鏡)を使って、皮膚をよく観察します。
肉眼では判断の難しい病変も、約10~30倍に拡大して観察することで診断制度が向上します。
肉眼やダーモスコピー(ダーモスコープを用いた検査)である程度「良性」「悪性」の判断は可能です。
しかし、悪性の可能性が少しでもあれば、皮膚を一部切り取って、顕微鏡で詳しく調べる検査を行うことがあります。病理検査を行うことで確定診断が可能となります。
当院では、ほくろのサイズや部位などを考慮しながら、将来的な傷跡を予想して「傷跡が目立たなくなる治療法」をご提案しております。
ほくろを保険診療にて治療するには、除去手術が必要となります。手術では母斑細胞を完全に取り切ることができるので再発は少ないです。さらに、摘出したほくろは、必ず病理検査に出して調べいます。なお、美容目的の平坦なほくろや小さなほくろではレーザー治療が可能ですが、自由診療となります。
※当院では初回診察当日は手術を行っておりません。また、レーザー治療も初回診察当日には行えない場合があります。受診時に手術またはレーザー治療の実施日のご予約をお願いしています。なお、手術予定の方には、初回診察日に採血検査を行います。
除去手術の所要時間:約30分(麻酔時間込み)
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
摘出手術の方法には2パターンあり、いずれの場合も局部麻酔をしてから除去しますので、痛みの心配はありません。
ほくろの形に添って、円形筒状のメスで小さくくり抜く方法で、主に5mm以下の小さなほくろが適応となります。従来からある手術法(紡錘切開)よりも切開する皮膚量を小さくすることができるため、体への負担を軽くできる低侵襲な手術法です。
※全てのほくろに適応できるものではありません。患者さんの状態によっては、従来の紡錘切開法が適応になることがあります。
メリット:一直線状の傷跡にはならず傷跡が小さく済む(縫わなくてよい場合もある)、手術時間の短縮(数分程度)、再発率は紡錘切除術と変わらない
デメリット:傷跡が盛り上がったりへこんだりすることがある、術後出血が起こる可能性がある、大きいほくろだと傷跡がケロイド化することがあるので行えない
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
治療後:術後約2週間軟膏やテープ保護が必要
皮膚外科の基本的な切開方法です。縫合しやすいようにできものを紡錘形(ひし形~レモン型)に切り込みを入れて、ほくろを切除・摘出するため、ほくろの組織を完全に取り切ることが可能です。くり抜き法に比べ、傷跡が大きくなりますが、当院は傷跡の治療も専門としているクリニックですので、できるだけ傷跡が目立たなくなるよう、しっかりと責任を持って治療を行っています。
なお、手術で切除した組織は病理検査に出して、念のため詳しく調べることが可能です。
術後の抜糸は約1週間後となります。
メリット:ほくろの組織(母斑細胞)の取りこぼしが少ないので再発しにくい、術後の傷跡管理がしやすい
デメリット:ほくろの直径に対して約2~3倍の長さの線状傷跡となる(半年くらい時間が経つと、白い線状になる)
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
ほくろの切除後、そのまま単純に縫合すると、非常に大きな傷跡となることが予想されるときに行う方法で、近くの皮ふをずらして(回転させて)塞ぐ方法です。主に鼻や口周りなどの大きなほくろに適応があります。
メリット:できるだけ目立たない傷跡にする、ほくろの組織(母斑細胞)の取りこぼしが少ないので再発しにくい、術後の傷跡管理がしやすい、
デメリット:縫い痕が北斗七星のような線状になるが、単純に縫うよりは短い全長となる(半年くらい時間が経つと、白い線状になる)
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
比較的小さいほくろでは、「炭酸ガスレーザー」によるレーザー治療が可能です。特に盛り上がりのあるほくろの治療に適しています。
炭酸ガスレーザーは細胞内の水分と反応して、熱エネルギーを発生させます。照射すると一瞬で組織を蒸散(蒸発させ外に出す)させ、周りの皮膚組織にあまり影響を及ぼさず、ほくろ部分だけを除去します。
また、照射周辺の血管はレーザー熱による凝固作用が働くため、くりぬき法などメスで切除・摘出するよりも出血を抑えることが可能です。局所麻酔を行ってから治療しますので、痛みの心配はありません。
メリット:メスよりも出血が少ない、傷が治るまでの治療がより簡単に行える
デメリット:組織を焼いてしまうので病理検査ができない(良性・悪性の確定診断ができなくなる)、3mm以上の大きいほくろでは傷跡が目立つことがある
レーザー除去の所要時間:約15分
起こりうる副作用:赤み・内出血・色素沈着・ケロイドなど
ほくろの除去治療後は、以下の点に注意して過ごしましょう。
除去治療後は色素沈着を起こしやすいため、これまで以上に念入りな紫外線対策が必要となります。
ほくろの保険治療は除去手術が必要となります。
なお、レーザー治療は自由診療です。
除去手術の治療費用目安(税込み・3割負担)は、以下の通りです。
なお、下記費用に加え、麻酔・病理検査費用3,000円程度、処方薬費用が500円程度かかります。
部位 | 範囲 | 料金 |
---|---|---|
顔面や首、頭、肘〜手指先、 膝〜足趾先の部分 | 2cm未満 | 5,000〜6,000円程度 |
2~4cm未満 | 12,000〜14,000円程度 | |
4cm未満 | 13,000〜15,000円程度 | |
上記を含まない部分 (体や肩〜肘の上、股〜膝上) | 3cm未満 | 4,000〜5,000円程度 |
3~6cm未満 | 10,000〜12,000円程度 | |
6cm未満 | 13,000〜15,000円程度 |
また、炭酸ガスレーザーによる「ほくろ治療」の費用目安(税込み)は以下の通りです。
※下記費用には初診料等含まれておりませんので、別途必要となります。
範囲 | 料金 |
---|---|
単発性のほくろや大きなシミ 合計3個まで | ¥33,000 |
上記、1個増えるごとに追加料金 ※術後半年以内の再発に対しては再度のレーザー照射は無料 (診察代などはかかります) | ¥5,500 |
多発性のいぼやシミ 2cmまで | ¥33,000 |
上記、1mm増えるごとに追加料金 ※術後半年以内の再発に対しては再度のレーザー照射は無料 (診察代などはかかります) | ¥1,100 |
メラノーマ以外にも、一見するとほくろに見える悪性腫瘍があります。
出血や潰瘍がみられる場合など少しでもおかしいと感じる「ほくろ」がありましたら、念のため一度ご受診ください。
ほくろの手術およびレーザー治療は、局部麻酔をしてから除去しますので、その際の痛みはありません。ただし、局部麻酔は注射で行いますので、注射のチクっとした痛みはあります。
なお、術後の抜糸も基本的には痛みはありません。
レーザーによるほくろ除去は、比較的再発率が高くなります。レーザー治療後6か月以内に再発した場合には、無料で追加のレーザー治療をお受けいただけます。
一方、手術による除去を行った場合の再発は、まれです。
小さなほくろの場合、傷跡も小さく済むためレーザー治療を行うことが多いです。
ただし、場所やほくろの大きさによって、手術をした方がレーザー治療よりも将来的な傷跡はきれいになることもあります。当院は患者さんのほくろの状態を医師がしっかり診断して、患者さんお一人お一人に合った治療法を提案させていただきます。
ほくろの治療に関して重視することは「将来綺麗な傷跡になるかどうか」です。何がベストなのか患者さんによって違うので、よく相談の上、ご提案させていただきます。