粉瘤は周りの皮膚よりも「硬い」できものです。また、できものに黒っぽい点(開口部)がみられたり、全体的に青黒かったりします。
なお、粉瘤と似ているできものに「脂肪腫(しぼうしゅ)」があります。
脂肪腫はゴムのように「柔らかいできもの」であり、皮膚の深いところにできやすいため、できもの全体の色に変化は見られず、単に皮膚が盛り上がっているように見えます。
粉瘤は皮膚にできる良性腫瘍の代表格で、皮膚が盛り上がった「硬いできもの」です。何らかの理由で皮膚の上皮成分が皮膚の中に落ちて袋を形成し、中に垢が溜まる病気です。
「脂肪のかたまり」と表現されることもありますが、実際は角質や皮脂など「垢のかたまり」です。
皮膚が破けると、中から膿のようなものが出て不快な臭いがします。
痛みなどないので放置されがちですが、最初は小さい粉瘤でも徐々に大きくなり、化膿することがあります。
別名:粉瘤腫、表皮のう腫(epidermal cyst)、アテローマ(atheroma)、アテローム
形状:皮膚からポコッと硬く盛り上がった半球状の固まり。真ん中に黒っぽい点(開口部)がみられることがある。
できやすい場所:からだ中どこでも(特に背中・うなじ・頬・耳たぶ)
症状:痛みはない。
粉瘤の一種として、以下のような疾患があります。
細菌感染や粉瘤の袋が破けて、内容物が皮膚の中に漏れ出して炎症することが原因で、赤く腫れて痛みや熱感が現れます。お尻や背中の粉瘤に多くみられます。治療は、炎症が軽ければ、炎症が落ち着くのを待ってから摘出手術を行います。また、炎症が酷ければ、切開して中の膿を出して、炎症が落ち着いてから再度手術で袋の摘出を行います。
頭部にみられる粉瘤の一種で、粉瘤よりも硬いできものです。遺伝で体質的にできやすい人がいます。
腕・首・脇にたくさんできる粉瘤の一種で、1cmくらいまでのコリコリしたできものが多発します。内容物はマヨネーズみたいな黄色いドロっとしたもので、臭いはありません。
粉瘤は、皮膚の下に袋(嚢腫)ができてしまい、本来ターンオーバー(お肌の新陳代謝)によって皮膚からはがれ落ちるはずの角質や皮脂が溜まってしまうことによって発生します。
ただし、「なぜ皮膚の下に袋ができてしまうか?」は、今のところはっきりしていません。
手のひらや足の裏にできる粉瘤では、これまで外傷が原因に関与していると考えられていましたが証明する根拠が乏しく、近年はイボウイルス感染が原因ではないかと考えられています。
なお、粉瘤は体質によってできやすい人がいますが、こちらも詳しくは明らかになっていません。
痛みの有無、粉瘤と思われる「できもの」ができた時期・経過など、詳しくお伺いさせていただきます。また、患部をよく観察したり触ったりして、できものの状態の確認を行います。
粉瘤は視診・触診など診察でほとんど診断可能ですが、他の疾患と区別がつかない場合には、超音波検査やCT検査などを行います。
他疾患との鑑別のために、超音波検査やMRI検査・CT検査などの画像診断を行うことがあります。
※当院では行っていないため、必要に応じて、提携施設をご紹介します。
切除した粉瘤は必ず顕微鏡で詳しく調べます。腫瘍の種類(良性・悪性)などを確認して確定診断となります。
粉瘤を治療するには、「摘出手術」が必要となります。
※当院では初回診察当日に手術を行っておりません。初回受診時に手術日のご予約をお願いします。その際、手術のための採血検査を行います。
当院では、粉瘤のサイズや部位などを考慮しながら、将来的な傷跡を予想して「傷跡が目立たなくなる治療法」をご提案しております。
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
摘出手術の方法には2パターンあり、いずれの場合も局部麻酔をしてから摘出しますので、痛みの心配はありません。
粉瘤の中心を小さく切り抜いて、中の内容物を絞り出し、その後に袋を取り出す方法です。
これまでの手術法(紡錘切開)よりも切開する皮膚量を小さくすることができるため、体への負担を軽くできる低侵襲な手術法です。
※全ての粉瘤に適応できるものではありません。
患者さまの状態によっては、従来の紡錘切開法が適応になることがあります。
メリット:粉瘤のサイズに対し傷跡が小さく済む(縫わなくてよい場合もある)、手術時間の短縮(数分程度)、再発率は紡錘切除術と変わらない
デメリット:粉瘤を取り残すリスクがある、術後出血が起こる可能性がある、粉瘤が大きい・癒着がある場合には行えない
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
※炎症の状態によっては縫い合わせないケースもありますが、くり抜き法の傷口は小さいので問題ありません。
皮膚外科の基本的な切開方法で、縫合しやすいようにできものを紡錘形(ひし形~レモン型)に切り込みを入れて、できものを切除・摘出する方法です。くり抜き法に比べ、傷跡が大きくなりますが、当院は傷跡の治療も専門としているクリニックですので、できるだけ傷跡が目立たなくなるよう、しっかりと責任を持って治療を行っています。
なお、手術で切除した組織は病理検査に出して、念のため詳しく調べます。
メリット:粉瘤の取りこぼしが少ない、術後の傷跡管理がしやすい
デメリット:粉瘤とほぼ同じサイズの傷跡ができる
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
※血腫(けっしゅ:血が溜まること)ができやすいと判断した場合、血が溜まるのを防ぐために手術部分にドレーン(細いチューブ)を入れて置きます。
※手術部分以外は通常通り洗ってOK
※血行が良くなると、血腫リスクが上がる
※手術部位以外は、当日からお化粧OK
粉瘤治療はすべて保険診療となります。
3割負担の治療費用目安(税込み)は、以下の通りです。
なお、下記費用に加え、麻酔・病理検査費用3,000円程度、処方薬費用が500円程度かかります。
部位 | 範囲 | 料金 |
---|---|---|
顔面・頭部・頸部や首、頭、肘〜手指先、 膝〜足趾先の部分 | 2cm未満 | 5,000〜6,000円程度 |
2~4cm未満 | 12,000〜14,000円程度 | |
4cm未満 | 13,000〜15,000円程度 | |
上記を含まない部分 (体や肩〜肘の上、股〜膝上) | 3cm未満 | 4,000〜5,000円程度 |
3~6cm未満 | 10,000〜12,000円程度 | |
6cm未満 | 13,000〜15,000円程度 |
粉瘤は周りの皮膚よりも「硬い」できものです。また、できものに黒っぽい点(開口部)がみられたり、全体的に青黒かったりします。
なお、粉瘤と似ているできものに「脂肪腫(しぼうしゅ)」があります。
脂肪腫はゴムのように「柔らかいできもの」であり、皮膚の深いところにできやすいため、できもの全体の色に変化は見られず、単に皮膚が盛り上がっているように見えます。
粉瘤の手術は、局部麻酔をしてから摘出しますので、摘出の際の痛みはありません。
ただ、局部麻酔は注射で行いますので、注射のチクっとした痛みはあります。
また、術後の抜糸も基本的には痛みはありません。
ただし、細菌感染や皮膚の摩擦などで皮膚の中の袋が破裂して皮膚内で炎症を起こす「炎症性粉瘤」になると、赤く腫れて痛みを伴います。炎症によって、麻酔注射が通常よりも痛く感じたり、麻酔が効きにくくなって施術中に痛みを感じたりすることがあります。
再発リスクは、どんな手術を行ってもあります。粉瘤は体質によってできやすい人や、粉瘤自体が皮膚であれば、体中どこにでもできる可能性があります。
粉瘤は良性腫瘍ではありますが、小さいうちに治療した方が傷跡も目立ちませんので、気づいたときに手術することをおすすめします。
粉瘤は本当に多い「皮膚のできもの」の一つです。将来的に傷跡が綺麗になるよう治療を進めて参ります。