瘢痕拘縮 | きずときずあとのクリニック 豊洲院 | 東京都江東区の形成外科・美容外科

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瘢痕拘縮

瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)とは

瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)とは、傷跡(瘢痕)が引きつれて、動かしにくくなる状態で、動作時に痛みを伴う場合もあります。

けがや手術などによる傷は、治る過程で少しずつ収縮し、硬く盛り上がった傷跡になりますが、瘢痕拘縮は、傷跡が縮む時に、周囲の正常な皮膚も一緒に引っ張られてしまうことが原因で起こります。特に、関節などの体の動きを伴う部位にできたケロイドや肥厚性瘢痕は、常に皮膚が引っ張られ、強い力がかかっていることから、適切な治療を行わずに放置したままにしていると、炎症が長引き、引きつれが起こりやすくなります。

瘢痕拘縮が起こりやすい部位と体への影響

瘢痕拘縮は、手足の指や肘、肩、首などの関節部の傷跡で多く起こるのが特徴です。

関節部分に拘縮が起こると、曲げたり伸ばしたりといった関節の動きが制限されてしまうことから、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

また、顔面にできた傷が原因で、まぶたや唇の周りなどに拘縮が起こる場合もあります。

まぶたや唇の周りに拘縮が起きると、目や口の動きが制限されて、うまく開閉ができない状態になるため、機能面はもちろん、審美面でも大きな問題になる場合があります。 瘢痕拘縮は、繊維が蓄積して硬くなった状態で、一度起きると傷跡の皮膚が柔らかくなるまでに長い時間がかかります。そのため、関節や口、目の周りなど、身体の動きを伴う部分に傷ができた時には、できるだけ早期に適切な治療を行い、引きつれを進行させないことが大切です。

(画像)瘢痕拘縮

瘢痕拘縮の治療目的

瘢痕拘縮によって身体の動きが制限され、生活に支障をきたすような場合は、傷跡の「突っ張り」を解除し、動きをスムーズにするための治療を行います。

特に成長期のお子さんの場合は、引きつれが原因で皮膚や骨の成長が遅れたり、関節の機能に影響が出たりする可能性があるため、早期に治療を行う必要があります。

ただし、肥厚性瘢痕やケロイドの発生には、患者さんの体質が大きく関係しており、単純に傷跡を切除するだけだと、さらに大きなケロイドや肥厚性瘢痕ができて、再び引きつれを起こしてしまう可能性があります。そのため、当院では、傷跡の大きさや方向、引きつれの強さなどを十分考慮し、お一人お一人の症状に合わせた治療を行うとともに、治療後の経過観察や傷跡のケアにも力を入れ、再び引きつれを起こさないことを目的に治療を進めていきます。

瘢痕拘縮のおもな治療法

瘢痕拘縮の治療は、「薬物療法で引きつれを緩和する治療」と、「外科的な手術で物理的に引きつれを解除してあげる治療」の大きく二つがあります。

引きつれの程度が軽い場合は、お薬の内服や、外用薬、注射治療などで、症状を改善することも可能ですが、重度の引きつれの場合には手術治療(瘢痕拘縮形成術)が必要になります。

軽度の拘縮の場合 ※保険適用あり

内服治療

ケロイドや肥厚性瘢痕の治療に使われる「トラニラスト(リザベン)」の内服を行います。

トラニラストは、抗アレルギー薬の一つですが、線維芽細胞の増殖を抑え、肥厚性瘢痕やケロイドが大きくなっていく刺激を抑えるとともに傷の赤みや痒みなどを軽減させる効果があります。

外用薬

ステロイド含有の軟膏もしくは張り薬(テープ)を使用します。

ステロイドには抗炎症作用があり、傷跡の痒みや痛みを軽減します。また、貼り薬の「エクラープラスター」や「ドレニゾンテープ」は、長期に渡り継続して使用することで、傷跡の盛り上がりや赤みを改善し、引きつれを防止する効果があります。

注射治療

「ケナコルト」というステロイド注射を直接、瘢痕部分に注射します。傷跡の痛みや痒みを和らげ、赤みや盛り上がりを改善する効果があります。また、徐々に瘢痕の硬さが取れてくることで、引きつれを改善する効果も期待できます。

重度の拘縮の場合 ※保険適用あり

手術 (瘢痕拘縮形成術)

皮膚の引きつれを取り除くため、傷跡の切除を行います。

瘢痕拘縮は、傷跡の皮膚が強く引っ張られることで起こることから、形成外科では傷跡の方向を変えたり、「Z形成術」や「W形成術」などのように敢えてジグザグに縫合したりして、手術後の傷が再度、引きつれを起こさないように工夫して治療を行います。

また、傷跡の状態によっては、「局所皮弁術(傷跡周辺の皮膚を切り取り、パズルのように組み合わせて縫合する)」や「植皮術(足りない皮膚を他の部位から移植する)」などを行うこともあります。

なお、術後の再拘縮を予防するため、手術を行う場合でも、内服薬や外用薬、圧迫治療など術後の治療・ケアは必要になます。

瘢痕拘縮治療の流れ

01 カウンセリング・診察

初診時には、ご記入いただいた問診表をもとに、カウンセリングと診察を行います。

傷跡の状態や自覚症状の有無などの確認をさせていただいた上で、治療方法をご提案いたします。引きつれが軽度の場合には、注射治療もしくは、内服薬や外用薬の処方のみとなりますが、手術が必要と診断され、治療をご希望される場合には、同意書をご記入いただき、治療の日程を決定いたします。

02 治療前準備・麻酔(※手術の場合)

治療当日は、洗顔・クレンジングなどの準備を行った後、麻酔を行います。

03 治療

麻酔の効果を確認後、手術治療(瘢痕拘縮形成術)を行います。

04 アフターケア

治療後は、外用薬の塗布、ガーゼやハイドロコロイド製剤による保護など、必要な処置を行います。

術後の経過が良好になるよう、ご自宅でのケア方法や注意点などの説明も行いますので、処置方法や経過についてなど、分からない点やご不安な点があればお気軽にお尋ねください。

治療後のケアと注意点

治療の経過を良好にするため、手術後のケアは非常に重要です。

以下のような点に気を付けましょう。

  • 手術当日は帰宅後、治療部位の冷却を行い、安静を保ちましょう。
  • 傷口の状態が落ち着くまで、1週間程度は激しい運動や飲酒などはお控えください。
  • 術後、傷跡の状態を確認するため、可能な場合には治療の翌日に診察にお越しいただきます。(遠方の方はオンライン診療も可能です。)
  • 抜糸は術後7~14日目頃になります。
    その後も、手術による傷跡が再度、引きつれを起こさないよう、一定期間、内服治療や圧迫治療(テープ、シリコンジェルシート、サポーターなど)を行っていただきます。

治療費について

機能面での障害を伴う瘢痕拘縮はケロイドや肥厚性瘢痕と同じく病気扱いになるため、内服、外用薬、手術などの治療は、保険適用になります。

傷跡の大きさや位置、引きつれ具合などは患者さんによって異なりますので、患者さんお一人お一人に合わせ、最適な治療内容をご提案いたします。

※肥厚性瘢痕やケロイド、瘢痕拘縮の治療が終了した後、傷跡をよりきれいにする治療(レーザーなど)を希望される場合は、原則、自費治療となります。

よくある質問

傷跡の引きつれを予防するにはどうすればよいですか?

瘢痕拘縮を起こさないためには、肥厚性瘢痕やケロイドを予防することが重要です。
傷ができてから時間が経っているのにもかかわらず、傷跡が大きくなってきたり、赤みや痛み、痒みなどが強くなってきたりした場合は、ケロイドや肥厚性瘢痕になる可能性が高いです。
引きつれを起こさないためにも、気になる症状がある時は、早めに形成外科を受診して、治療を受けられることをおすすめします。

瘢痕拘縮の手術が必要な場合、いつ頃から行うことができますか?

傷跡の赤みが強く、炎症が強いうちは、まだ瘢痕組織が変化している最中であり、引きつれの状態も正確に判断できないため、まずは内服薬や外用薬などで炎症を抑える治療を行います。
手術を行う時期には個人差もありますが、赤みや盛り上がりが落ち着いて、傷跡の状態が安定する半年~一年位が目安になります。

院長からひと言

瘢痕拘縮は手術が必要になることが多いです。大変な治療ですが頑張っていきましょう。

記事執筆者

院長村松英之
きずときずあとのクリニック豊洲院院長 村松英之

資格

日本形成外科学会専門医
日本熱傷学会専門医
日本創傷外科学会専門医
皮膚腫瘍外科分野指導医
小児形成外科分野指導医