脂肪腫は放置していても命に関わることはありません。
しかし、脂肪腫が大きくなってから摘出手術を行うと、全身麻酔が必要になるなど手術リスクが高くなったり、手術の傷跡も大きくなったりします。
さらに、万が一腫瘍が悪性だった場合、治療開始の遅れが命に関わる可能性もあります。
脂肪腫ができても痛みがないので、少し大きくなるまで気づかれないケースが多いですが、気づいたらできるだけ小さいうちに摘出してしまうことをおすすめします。
脂肪腫は皮膚の下にできる「できもの」の代表格で、皮膚が盛り上がった「柔らかいできもの」です。
できものは「こぶ」や「しこり」と表現されることがありますが、ほとんどの脂肪腫は良性腫瘍です。脂肪細胞のかたまりが被膜に覆われて存在しているので、皮膚表面から触ると「できもの」が動きます。また、皮膚と筋肉の間にできる「浅在性脂肪腫」が多いのですが、筋肉の中にできる「深在性脂肪腫」の場合もあります。
なお、脂肪腫と同様、痛みのないできものに「粉瘤(ふんりゅう)」がありますが、脂肪腫は周りと同じ皮膚の色のできものであり、自然に小さくなることはほぼありません。
脂肪腫は子どもの頃に発症するとされていますが、ゆっくり少しずつ大きくなっていくため、20歳以下で発見されるのはまれで、比較的できものが大きくなった40~50代に発見されやすく、女性や肥満者に多い傾向があります。
別名:リポーマ
形状: 皮膚からポコッと盛り上がった半球状の柔らかい固まり、触ると動く、周りの肌の色と同じ色、大きさは数mm~10cm以上のものまで様々
できやすい場所:からだ中どこでも(特に背中・肩・首が多く、腕や足・太ももなど体に近い四肢やおでこにも見られる)
症状:痛みはない
脂肪腫の根本原因は脂肪細胞の増殖ですが、「なぜ脂肪細胞が増殖するか」など詳しい原因はわかっていません。また、腫瘍組織を分子生物学的に調べてみると、脂肪腫の多くに染色体異常があるとされていますが、今のところ詳細は明らかになっていません。
なお、単発性脂肪腫は肥満・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病の持病をお持ちの方にできやすい傾向があり、外傷との関連性が推察されています。一方、多発性では遺伝やアルコール摂取が発生要因になっていることがあります。
痛みの有無や経過など、詳しくお伺いさせていただきます。
通常、脂肪腫は特徴的な見た目や触診で容易に診断できますが、脂肪腫の大きさ・どの深さにあるのかを的確に把握するため、画像検査を行います。
当院では脂肪腫が疑われた場合、必ずMRI検査やCT検査・超音波検査などの画像検査を行って、できものの大きさ・存在する場所(皮膚の深さ)・「脂肪腫か否か」をしっかりと確認します。特にMRI検査は、脂肪腫の診断に有用です。
ただし、MRI検査では「悪性かどうか」まで完全に判断することは難しいです。必要に応じて皮膚生検(病理検査)を行うことがあります。
※MRIおよびCT検査など画像検査は、当院の提携する施設で行っていただきます。なお、予約はすぐに取れますので、当日もしくは数日中に行っていただいております。
病理検査は、できもの(腫瘍)を一部切り取って、顕微鏡で詳しく調べる検査です。
病理検査により「腫瘍が悪性かどうか」の確定診断が可能となります。
なお、当院では、摘出手術後に病理検査を行って確定診断としています。
以下のような特徴がある腫瘍では脂肪腫以外の疾患や悪性の可能性があります。
MRI検査にて悪性が疑われた場合には、手術前に病理検査を行うことがあります。
脂肪腫は、今のところ「手術による摘出」以外の治療法がありません。
脂肪腫が疑われた場合、当院では必ず手術前に画像検査をして、脂肪腫の大きさ・深さなどを把握してから的確な手術を行うよう努めております。
さらに、将来的な傷跡を予想して「傷跡が目立たなくなる方法」をご提案しております。
また、手術をする際、当院ではできるだけ目立たない部位からアプローチしたり、切開サイズもなるべく小さくしたりするなど、傷跡が目立たなくなるよう工夫して手術に当たっております。
※当院では初回受診当日の手術は行っておりません。初回受診から約2~4週間後の手術予定となります。
脂肪腫の摘出手術は、基本的に脂肪腫の真上を腫瘍の直径から同じくらいの長さで線状に切開し、少しずつ周りから剥がして摘出します。
その後、切開部分を洗浄後止血して縫合します。
なお、脂肪腫摘出後は皮膚内に大きな空間ができ、出血が溜まりやすくなるため、血抜きの管(ドレーン)を留置しておくことがあります。
また、摘出手術は局部麻酔をしてから行うので、痛みの心配はありません。
ただし、筋肉の深い部分や神経の近くに腫瘍がある場合には全身麻酔下で行うこともあります。
※全身麻酔が必要となる場合には、対応している提携病院をご紹介します。
メリット:腫瘍の取りこぼしが少ないので再発しにくい
デメリット:腫瘍の直径と同じくらいの長さの線状傷跡となる(半年くらい時間が経つと、白い線状になる)
摘出手術の所要時間:小さい脂肪腫では約30分(麻酔時間込み)、10cm超では約1時間
起こりうる副作用:術後出血・痛み・内出血・感染・ケロイド(傷跡の盛り上がり)など
脂肪腫の摘出手術後は、以下の点に注意して過ごしましょう。
脂肪腫の治療はすべて保険診療で行えます。
摘出手術の治療費用目安(税込み・3割負担)は、以下の通りです。
なお、下記費用に加え、麻酔・病理検査費用3,000円程度、処方薬費用が500円程度かかります。
部位 | 範囲 | 料金 |
---|---|---|
顔面・頭部・頸部や首、頭、肘〜手指先、 膝〜足趾先の部分 | 2cm未満 | 5,000〜6,000円程度 |
2~4cm未満 | 12,000〜14,000円程度 | |
4cm未満 | 13,000〜15,000円程度 | |
上記を含まない部分 (体や肩〜肘の上、股〜膝上) | 3cm未満 | 4,000〜5,000円程度 |
3~6cm未満 | 10,000〜12,000円程度 | |
6cm未満 | 13,000〜15,000円程度 |
脂肪腫は放置していても命に関わることはありません。
しかし、脂肪腫が大きくなってから摘出手術を行うと、全身麻酔が必要になるなど手術リスクが高くなったり、手術の傷跡も大きくなったりします。
さらに、万が一腫瘍が悪性だった場合、治療開始の遅れが命に関わる可能性もあります。
脂肪腫ができても痛みがないので、少し大きくなるまで気づかれないケースが多いですが、気づいたらできるだけ小さいうちに摘出してしまうことをおすすめします。
脂肪吸引による治療を行っているケースがありますが、再発リスクが高いため、当院では行っていません。
再発を防止するためには、手術で腫瘍細胞を摘出する必要があります。
可能です。
当院ではおでこにある脂肪腫の真上を切開するのではなく、髪の毛の生え際など目立たないところに切り込みを入れて、そこから脂肪腫を摘出しますので、おでこ自体には傷跡が残りません。しかし技術的にも難しく、時間もかかるため自費診療(麻酔込み¥220,000)となります。
脂肪腫はゴムのように「柔らかいできもの」です。
また、脂肪腫は皮膚の下にできるため、できものと周りの皮膚の色に違いはなく、単に皮膚盛り上がっているように見えます。
一方、硬いできものの代表的な疾患は、「粉瘤」です。周りの皮膚よりできものが硬く、できもの中央に黒っぽい点(開口部)がみられたり、全体的に青黒かったりします。
皮膚が破けて、中から膿のようなものが出てくると、不快な臭いがします。
脂肪腫は、手術後の傷跡で悩まれる方が多いです。当院ではできる限り目立たない場所から小さい切開で取るようにしています。ご相談をお待ちしております。