傷跡(未成熟瘢痕)のケア | きずときずあとのクリニック 豊洲院 | 東京都江東区の形成外科・美容外科

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傷跡(未成熟瘢痕)のケア

けがの治療や手術などが終わったばかりの傷跡を見て、「この後、この傷跡はちゃんと薄くなるのかしら?」と不安になってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?

一度できてしまった傷跡は、残念ながら無くなることはありませんが、通常、時間の経過とともに、少しずつ薄く、目立たなくなっていきます。

しかし、傷が治ったばかりの頃は、まだ皮膚がデリケートで、とても弱い状態です。この時期に余計な刺激を与えてしまうと、傷跡の回復が遅れてしまったり、目立つ傷跡になってしまったりする場合があるため、適切なケアで傷跡を大事に保護することが大切です。

傷跡のケアとは?

傷の治療が終わった後、傷跡の赤みがなかなか取れないことを心配される患者さんはとても多いですが、通常、傷跡というのは、治ってから一か月目くらいが一番赤く、腫れが残っているような場合もあります。

傷の治癒後、半年から一年くらいまでの傷跡は、「未成熟瘢痕(みせいじゅくはんこん)」と言われ、まだ皮膚には赤みや硬さが残っている状態です。

未成熟瘢痕
(参考)未成熟瘢痕

外傷や手術などで皮膚に傷が付くと、皮膚の真皮層(表皮の下にある層)ではコラーゲンの増殖が起こり、そのコラーゲンを基に傷の修復が行われます。そのため、傷跡の部分というのはほとんどがコラーゲン繊維の塊で、周囲の正常な皮膚とは組織の構成が異なることから、その質感の差が傷跡として残ります。傷が完全に治った後も、その違いは残るので、傷跡自体が消えて無くなるということはありませんが、通常は、時間の経過とともに少しずつ赤みや硬さが取れ、やがて肌の色に近い白くて柔らかい「成熟瘢痕(せいじゅくはんこん)」へ変化していきます。(※損傷が表皮のみのごく浅い傷の場合であれば、跡が残らない場合もあります)

成熟瘢痕
(参考)成熟瘢痕

しかし、傷が塞がったばかりの未成熟瘢痕は、まだ皮膚が落ち着いていないので、この時期に何らかの刺激を与えてしまうと、傷跡はなかなか良くならないどころか、場合によっては炎症を起こして「ケロイド」や「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」のような目立つ傷跡になってしまったり、色素沈着を起こしたりするケースもあります。*1

*1ケロイドや肥厚性瘢痕は、傷跡の皮膚が赤く盛り上がってしまうもので、特に良く動かす関節部や、強い緊張がかかる部位などに発生しやすいと言われています。

そのため、未成熟瘢痕の時期は、皮膚の状態が落ち着くまで、さまざまな刺激から傷跡を大事に守ってあげることがとても重要になります。適切なケアを行い、未成熟瘢痕をできるだけ早く成熟瘢痕の状態に変化させることができれば、最終的に残る傷跡も目立ちにくく、白いきれいな状態にすることが可能になります。

ケロイド・肥厚性瘢痕
(参考)ケロイド・肥厚性瘢痕

傷跡のケアのポイント

未成熟瘢痕の時期のケアには、以下のような3つの大きなポイントがあります。

保湿

適度な湿度を保ち、皮膚の修復力を高める「湿潤療法(しつじゅんりょうほう)」は傷の治療に効果的ですが、傷が塞がった後も保湿を続けることが大切です。
傷跡が乾燥してしまうと、痒みや痛みが出てくるほか、赤みがいつまでも残ってしまうため、しっかり保湿をするようにしましょう。

遮光

傷跡は、紫外線に当たると色素沈着を起こします。一度、色素沈着を起こすと、傷跡が茶色くなってなかなか治らないため、まずは色素沈着を予防することが重要です。傷の治癒後、最低3か月~半年程度は、日焼け止めや遮光性のテープなどでしっかり紫外線対策を行いましょう。

保護

未成熟な傷跡は、擦れたり、掻いてしまったりすると、再び傷が付いてしまうことがあります。摩擦などの強い刺激から守るため、傷跡をしっかり保護しておくことが大切です。

傷跡のケアの方法と種類

テープ

遮光性の医療用テープで、「マイクロポアテープ」「アトファイン」などの製品があります。
傷跡の上から貼ることで、傷跡を隠すことができ、紫外線の防止効果もありますが、当院では、おもに傷跡の緊張を取り除く目的で使用しています。傷跡はさまざまな方向に引っ張られると、広がって治りが悪くなります。そのため、手術や傷の縫合をした後の傷跡などはテープで固定します。
ただし、テープは貼ったり剥がしたりする際の刺激が強いため、かぶれやすく、赤みが長引いてしまう場合があるので、頻繁に張り替えず週に一度程度の交換に抑えます。

※テープによるケアについてはこちらのにも詳しい情報があります。(動画)

シリコンジェルシート

薄いシリコン製のシートで、さまざまな種類の製品がありますが、当院では「メピフォーム」を使用しています。
傷跡を保護し、皮膚の緊張を取る効果があります。また、高い保湿作用があるのも特徴で、傷跡の赤みや痛み、痒みを改善する効果も期待できます。
シリコンジェルシートは、ケロイドや肥厚性瘢痕の予防や治療には最も効果があると言われており、当院では、おもにケロイドや肥厚性瘢痕になりやすい部位(胸部~肩、上腕、下腹部、肘や膝の関節部分など)に使用しています。
シリコンジェルシートは海外では傷跡治療によく使われている製品で、その効果も証明されていますが、残念ながら、現時点において日本国内では保険適用にはなっていません。

※シリコンジェルシートによるケアについてはこちらにも詳しい情報があります。(動画)

軟膏(塗り薬)

未成熟瘢痕における軟膏治療の一番の目的は傷跡の保湿です。一日2回傷跡に塗っていただく必要がありますが、顔や体どこでも使用できるのがメリットです。
強い緊張がかからない顔の傷跡などは軟膏(塗り薬)によるケアが適していますが、軟膏には紫外線防止効果はないため、外出時には必ず日焼け止めを併用するようにしましょう。
軟膏の種類によって成分や効果が異なりますので、それぞれの患者さんの肌質や生活などに合わせ、ご自分に合ったもの使っていただくことが大切です。

ヒルドイドソフト軟膏

保険治療でも使用される「ヘパリン類似物質クリーム」と言われるもので、高い保湿効果があるのが特徴です。おもに肥厚性瘢痕やケロイドの治療に使われる外用薬ですが、未成熟瘢痕の保湿にも効果が期待できます。ヒルドイドは、軟膏以外にもフォームタイプやスプレータイプなどもあり、部位によって使い分けることも可能です。
※未成熟瘢痕に使用する場合、保険適用の可否は症例によります。

アットノン

ヒルドイドと同様のヘパリン類似物質で、保湿の効果があります。傷跡を隠すことができるコンシーラータイプなどもあり、ドラッグストアなどで手軽にお求めいただけるのがメリットです。

ケロコート

塗るタイプのシリコンで、未成熟瘢痕の赤みや痒みを和らげ、表面を滑らかにする効果があります。透明なジェルで塗りやすく、薄い膜状になるので目立ちにくいのがメリットです。
海外では傷跡治療によく使われている製品で、効果も証明されていますが、残念ながら日本国内では保険適用にはなっておらず、インターネットなどでお求めいただけます。

バイオイル

オイルに含まれている「パルミチン酸レチノール」は、ビタミンAの一種で、傷跡の補修や日焼けによるダメージを補修する効果があります。朝晩一日2回、塗布していただくことで、傷跡の赤みを早く消すことが可能です。サラッとした使いやすいオイルのため、赤ちゃんなどにも使っていただくことができます。ドラッグストアなどでお求めいただけます。

エンビロン(モイスチャークリームⅠ)

エンビロンはクリニック専用の化粧品で、ビタミンAとビタミンCの成分が入っているクリームです。ビタミンAの傷を治す効果に加え、メラニン生成を抑えるビタミンCの効果もあるため、傷跡の色素沈着を予防する効果が期待できます。赤い傷跡、黒い傷跡の両方に効果があることから、当院では傷跡の治療に一番おすすめしており、お子さんや乳幼児でも安心して使っていただけるのも大きなメリットです。

※軟膏によるケアについてはこちらのにも詳しい情報があります。(動画)

未成熟瘢痕のケア方法

よくある質問

傷跡のケアは通院が必要ですか?

当院では、傷跡のケア方法を指導させていただいた後、経過観察のため、1か月後、3か月後、半年後に通院していただきます。その後、もし手術やレーザーなどの治療を希望されない場合には、そこで終了となります。
当院は予約制となっておりますので、受診をご希望の際は、お手数ですが、ホームページまたはお電話でご予約いただくようにお願いいたします。

傷跡を改善するレーザーや手術などの治療を早く受けたいです。

傷跡の状態が気になり、ご不安なことと思いますが、焦って傷跡に刺激を与えるような治療は、副作用も多いのでおすすめできません。
未成熟瘢痕の状態でのレーザー治療は、レーザーの刺激で赤みが強くなったり、水ぶくれができたりすることがあるので、ロングパルスNd:YAGレーザーは、傷が治ってから最低3か月、フラクショナルレーザーは半年程度経過してから治療を行うことをおすすめします。
手術も同様で、未成熟瘢痕の状態で行うと合併症が起こりやすく、ご希望の結果にならないことが多いため、半年程度経過してからの治療をおすすめします。
その間、ご不安もあるとは思いますが、適切なケアを続けていれば、ほとんどの傷跡は白い成熟した傷跡に落ち着きます。

メイクは可能ですか?顔の傷をテープで隠しても良いですか?

バイオイルなどでしっかり保湿をした後、傷跡の上にお化粧をすることは問題ありませんが、テープは赤みが消えにくくなってしまうので、できるだけ控えましょう。
傷跡が目立って気になる時は、コンシーラーで隠すか、メディカルメイク(あざや傷跡などがある皮膚をきれいに修復するメイク)がおすすめです。やむを得ず、テープを貼る場合には、できるだけ貼りっぱなしにするか、貼る期間を短くするようにしましょう。

院長からひと言

けがが治ってから、半年~一年くらいまでの間は非常に大事です。
将来的な傷跡をきれいにするために、傷跡ケアを行ってあげましょう。
傷跡は、けがややけどを、身体が頑張って修復してくれた証です。
そんな傷跡をやさしくケアしていってあげましょう。

記事執筆者

院長村松英之
きずときずあとのクリニック豊洲院院長 村松英之

資格

日本形成外科学会専門医
日本熱傷学会専門医
日本創傷外科学会専門医
皮膚腫瘍外科分野指導医
小児形成外科分野指導医