【熊被害】クマ外傷の9割は顔面損傷 | きずときずあとのクリニック 豊洲院・銀座院 | 東京都江東区・中央区の形成外科・美容外科

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【熊被害】クマ外傷の9割は顔面損傷

2025.12.06

きずときずあとのクリニック銀座院 院長の村松です。

連日ニュースで報じられているクマの出没と被害の増加に、皆さまも強い危機感を抱いていることと思います。12月に入っても被害は止まらず、その深刻さは増す一方です。

今回は、私自身の経験に基づき、クマに襲われた際の外傷の現実、特に形成外科的な視点から見た深刻なダメージと、それに必要な治療についてお話しします。

私は以前、群馬県の前橋赤十字病院で勤務していました。あの地域は山間部も近いため、残念ながらクマの被害も多く、クマに襲われて救急搬送されてくる患者さんを何度も診てきました。

その壮絶な現場を知っているからこそ、今の状況に強い危機感を覚えています。

実際、クマに襲われて運ばれてくる患者さんの外傷は、私たちの想像を絶するものです。クマの爪や牙は非常に強力で、皮膚がめくれ上がり、骨が見えている、といった重度の損傷が多くを占めます。

クマ外傷の9割が「顔面損傷」

クマ外傷の最も恐ろしい現実として、約9割が「顔面」を損傷するというデータがあります。

なぜ、顔が集中的に狙われるのか?

  1. 咄嗟の防御行動: クマに襲われたとき、多くの人は本能的に顔を手で覆って守ろうとします。しかし、これは顔と手を同時期に損傷させる結果につながります。
  2. 攻撃の標的: クマが人間を攻撃するとき、顔や頭部は最も狙いやすい部位です。

顔には、目、鼻、耳、口といった、生命維持と生活の質に関わる重要な器官が集まっています。クマの牙や爪による損傷は、単なる見た目の問題に留まりません。

  • 失明
  • 顔面麻痺
  • 呼吸困難(気道損傷)

など、重大な後遺症が残るリスクが非常に高いのです。

クマ外傷後の形成外科的治療

クマ外傷の治療は、単に傷を縫い合わせるだけでは終わりません。初期段階の救命処置の後、長期的な機能回復と再建を目指す形成外科的な高度な治療が必要となります。

治療の二段階

段階目的と処置
初期対応(救命)止血、感染予防、組織の温存。クマの口には大量の雑菌がいるため、徹底した洗浄と感染予防が不可欠です。
再建治療失われた組織の補填と機能の回復。損傷した皮膚や筋肉を縫い合わせるだけでは不十分で、以下の高度な手術が求められます。

形成外科的再建手術

クマ外傷では、皮膚や組織が広範囲に失われることが多いため、以下の技術が必須となります。

  1. 皮膚移植(植皮): 他の部位から皮膚を採取し、損傷部位に移植する。
  2. 皮弁(ひべん)移植: 血流を持つ皮膚、皮下組織、筋肉など、他の部位の組織を移植し、欠損した組織を補い、機能を再建する。

クマによる顔面外傷は、「失われた組織をどう補い、顔の機能をいかに守るか」という非常に難易度の高い治療なのです。

まとめ

私たちの日常を脅かすクマ外傷の現実、特にその9割が顔面損傷であること、そして形成外科的な高度な再建治療が必要となることについてお話ししました。

顔面を狙われると失明や顔面麻痺のリスクが非常に大きいです。

クマに遭遇しないための対策を徹底することが何よりも重要ですが、万が一に備え、重度外傷に対する形成外科医の役割についても知っていただければ幸いです。

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【熊被害】クマ外傷の治療に携わってきた医師が、形成外科の観点からクマ被害の衝撃的な実態を解説

【参考文献】
①日形会誌(J.Jpn.P.R.S.), 43:60~66,2023 クマ外傷10例の検討 大滝真由子・曽束洋平・植木春香・松田健
②日救急医会誌. 2011; 22: 229-35 P229 クマ外傷の4例 加藤 雅康・林 克彦・前田 雅人・安藤 健一 菅 啓治・今井 努・白子 隆志
③日本口腔外科学会雑誌 Oct. 2014 Vol. 60 No. 10 P581~586 ツキノワグマに襲撃され広範囲な顔面裂創と下顎骨粉砕骨折をきたした2例 田中宏和・宮澤英樹・林 清永 峯村俊一・倉科憲治・栗田 浩

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