急性虫垂炎とは聞いたことがなくても、「盲腸」と言われれば、誰でも一度は耳にしたことがあるはずです。
しかし、
「盲腸って聞いたことがあるけどどんな病気なのだろう?」
「急性虫垂炎を手術した傷跡はどうなるんだろう?」
など疑問に感じる方もいらっしゃいます。
そこで本記事では、急性虫垂炎とはどんな病気なのか?また、虫垂炎の治療法やそれに伴ってできる傷跡について詳しく解説します。
虫垂炎になってしまっても落ち着いて対処できるように、知識を取り入れて備えておきましょう。
虫垂炎とは、大腸の一部である「盲腸」の病気で、盲腸の中でも虫垂と呼ばれる部位が炎症を起こしている状態のことです。
虫垂炎は、子供から大人まで発症する恐れのある病気です。
では、虫垂炎はなぜ発症してしまうのでしょうか?また、虫垂炎の症状も合わせて解説していきます。
急性虫垂炎が起こる原因の一つとして、異物や糞石などによって、虫垂内で閉塞が起こり細菌感染を起こすことが挙げられます。
また、食生活やストレスなどの乱れた生活習慣も急性虫垂炎になってしまう原因となる場合もあるでしょう。
これらの原因によって、虫垂内が炎症を起こし、化膿してしまうことにより「虫垂炎」という病気になってしまいます。
虫垂炎になってしまったら、どのような症状が起こるのでしょうか。
虫垂炎の代表的な症状は、腹痛です。
腹痛の前には、下痢や便秘などの便通異常を起こす場合が多いでしょう。
腹痛の他にも、虫垂炎の初期症状として、胃痛や腹部の張り、みぞおちの痛みがあります。症状が進むと、みぞおちの痛みから右下腹部の痛みになり、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が現われるようになります。
急性虫垂炎になってしまったら、どのような治療を行うことになるでしょうか。
主に「抗生剤治療」か「手術」かが行われます。
どのような治療になるのか詳しく見ていきましょう。
軽度の虫垂炎である場合は、手術によって傷跡を作ることなく、抗生剤治療で炎症を抑えるといった方法もあります。
抗生剤治療は、継続的な治療が必要で、約1週間〜2週間続ける必要があります。
ただし、虫垂炎の再発のリスクもあり、再発してしまうと手術が必要となるでしょう。
また、炎症が治まらず、虫垂が破裂してしまうというリスクもあるため、経過観察が大切です。
盲腸炎、いわゆる急性虫垂炎という病気になってしまったら手術が必要だと感じている方も少なくありません。
急性虫垂炎の手術には、開腹手術と腹腔鏡下手術の2種類があります。
2種類の手術は、どのように行われるかを説明します。
開腹手術は、文字通り腹部を開く手術になります。
できる傷跡の大きさは約5cmほどで、虫垂を根元から縛り、取り除く手術です。
この手術方法は、虫垂炎が重症である場合や合併症がある場合に行われるものです。
どのような合併症があるかは、本記事の後半で説明します。
腹腔鏡下手術は、まずお腹に小さな穴をあけ、腹腔内にガスを注入してお腹に空洞を作り、腹腔鏡という小型カメラによって内部を確認します。
カメラで腹腔内を確認することができたら、さらに小さな穴を2〜3箇所あけて、メスや凝固装置などで原因となる部分を焼き切ります。
そのため、傷跡は開腹手術に比べて小さいです。
開腹手術 | 腹腔鏡下手術 | |
手術時間 | 約1時間〜1時間半 | 約40分〜1時間 |
傷跡 | 約5cmの傷跡が1つ | 約5mm〜1.5cmの傷跡が2〜3つ |
術後の痛み | 切開部分が大きいため、腹腔鏡下手術よりも痛みは強く、回復にも時間がかかります。 | 傷跡が小さいため、回復が早く、痛みは軽度です。 |
術後の入院期間 | 3日〜1週ほど | 1日〜3日ほど |
虫垂炎手術後の傷跡が目立ちやすい人の特徴を3つご紹介します。
虫垂炎の手術後、傷跡の目立ちやすさは個人の体質や年齢によって大きく左右されます。
若い人は皮膚の再生能力が高い反面、傷跡が盛り上がりやすい傾向があります。
一方、高齢者は肌の再生が遅いため、傷が治るのに時間がかかり、色素沈着が残ることが多いです。
また、もともとケロイド体質の人は、通常よりも傷跡が厚く盛り上がることがあり、特別なケアが必要になります。
手術後の傷口のケアが不十分だと、炎症や感染を起こしやすくなり、その結果、傷跡が悪化することがあります。
例えば、かさぶたを無理に剥がしてしまったり、消毒や保湿を怠ったりすると、皮膚の再生が妨げられ、傷跡が広がる可能性があります。
特に術後は清潔を保つことが大切で、医師の指示に従って適切なケアを行うことが重要です。
手術後の傷跡は、紫外線や衣服との摩擦によって色素沈着しやすくなります。
紫外線を浴びると、メラニン色素が増加し、傷跡が茶色く色づいてしまうことがあります。
また、ベルトや下着のゴムなどが傷口に擦れると、刺激が加わり、炎症を起こして傷跡が悪化することもあります。
手術後は、UV対策や適切な衣類選びを意識し、傷跡への刺激を最小限に抑えることが大切です。
自分でできる傷跡を目立たなくするためのケア方法をご紹介します。
術後の傷口を清潔に保つことは、傷跡をきれいに治すための基本です。
感染を防ぐために、医師の指示に従い、適切な方法で傷口を洗浄することが重要です。
シャワーを浴びる際は、刺激の少ない石鹸を使用し、泡で優しく洗うようにしましょう。
また、タオルで強くこすらず、軽く押さえるようにして水分を拭き取ることが大切です。
手術後の皮膚は乾燥しやすく、そのままにしておくと傷跡が硬くなったり、色素沈着が進んだりすることがあります。
保湿剤を使って傷跡周辺の肌をしっかりと保湿し、柔軟性を保つことが大切です。
また、傷跡が紫外線を浴びると、色が濃く残ってしまうため、外出時にはUVカット効果のあるテープや日焼け止めを使用するとよいでしょう。
傷跡の治療には、シリコンシートや傷跡用テープを活用するのも効果的です。
シリコンシートや傷跡用テープは、傷跡を適度に保湿し、外部刺激から守る役割を果たします。
特にシリコンシートは、肥厚性瘢痕やケロイドの予防に有効で、一定期間使用することで傷跡を薄くする効果が期待できます。
市販の傷跡ケア用品を活用する際は、医師と相談しながら、自分の傷跡に合ったものを選びましょう。
虫垂炎治療にはどのようなリスクがあるか、またどのような合併症を引き起こす可能性があるかを解説します。
虫垂炎は、細菌感染により虫垂が炎症を起こす病気です。
感染した部分を取り除いたり、洗浄するために手術するのですが、手術後にも再感染してしまわないように定期的に経過観察する必要があります。
手術中に出血があれば、出血の原因となっている血管を糸で縛ったり、焼いたりすることによって止血します。しかし、手術後にも止血した糸や焼いてできたかさぶたが外れてしまい、出血を起こす可能性があります。
出血が少なければ、自然治癒で治る場合もありますが、大量に出血している場合は再手術が必要です。
虫垂炎を治療せず放置して炎症が促進してしまっていたり、適切な治療がされなかったりすると、「腸閉塞」という合併症を引き起こす可能性があります。
虫垂炎の手術後に、腸管が癒着して腸閉塞になってしまうことがあるのです。
腸閉塞の症状は、腹痛や吐き気、便通異常などですので、虫垂炎の手術後に腸閉塞の症状が見られる場合は、すぐに医師に相談しましょう。
「腸瘻、糞瘻」も虫垂炎が重症化したときに起こりうる合併症の一つで、腸や大腸から他の臓器や体外への経路に異常を起こす病気です。
腸瘻や糞瘻になってしまうと、腸の内容物や糞便が外部へ漏れ出てしまいます。
症状は、腹痛や発熱、異常な排出物(腸の内容物や糞便が膣や膀胱などから排出されること)があります。
急性虫垂炎が再発してしまわないように、「退院後に気をつけるべき3つのこと」をご紹介します。
退院後は、なるべく消化の良いものを食べるようにしましょう。
ゆっくりよく噛んで食べるようにすることで、消化を促進させ、体への負担を少なくすることもできます。
また退院後は、しばらく辛いものや油っぽいものは控えるようにしてください。
退院後の運動は可能ですが、激しい運動は控えるようにして、体への負担を少なくしたり、傷口が開いてしまわないように注意をする必要があります。
通常の運動を再開するタイミングは、医師と相談して決めると良いでしょう。
手術後は、1、2日後からシャワーを浴びることが許可されるのが一般的です。
湯船に浸かることは、傷口から細菌が入ってしまう可能性もありますので、傷口が完全に塞がるまでは、シャワーのみで入浴は控えましょう。
しかし、術後の傷跡をきれいに治すためにも清潔に保つことは大切です。
本記事では、急性虫垂炎とはどんな病気なのか?また、虫垂炎の治療法やそれに伴ってできる傷跡について詳しく解説しました。
虫垂炎は、虫垂という内蔵の一部が炎症を起こす病気です。虫垂炎になってしまった時の手術方法は、主に「開腹手術」と「腹腔鏡下手術」の2パターンで、手術方法によって傷跡が変わります。
虫垂炎が再発しないためにも、生活習慣に気をつけましょう。
さらに、傷跡をきれいに治したいという方は、医療の力に頼ることもできます。詳しくは、「なぜポテンザが肥厚性瘢痕や術後早期の傷跡に効果的なのか?」の記事をご覧ください。